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「慰安婦」問題に焦点を当て、戦時性暴力の被害と加害の資料を集めた「女たちの戦争と平和資料館」(wam)のブログです。
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米議会での演説って栄誉なの?
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安倍首相と人身売買(3)産経の誤報と結論
すみません、昨日、間違えて更新してしまったようですが、書きかけでしたので、以下訂正版です・・・。




もう一点、ワシントン・ポストの原文を確認して気が付いたのが、産経の誤報である。またもや。

2015年3月28日の産経では、紙面版で:

同紙電子版が伝えた詳報によると、首相は慰安婦問題によって「女性の人権が侵害された」と指摘し、「21世紀を人権侵害のない最初の世紀とすることを願っている」と述べた。
(電子版ではちょっと違う:同紙電子版が伝えた詳報によると、首相は慰安婦問題により「女性の人権が侵害された」と指摘「21世紀を人権侵害のない最初の世紀とすることを願っている」と述べた。)



「首相は慰安婦問題によって『女性の人権が侵害された』と指摘した」という部分、「問題」によって女性の人権が侵害ってどういうことだろう?と思ったし、もしも「慰安婦」制度が女性の人権侵害だと認めたなら、今まで発言していないので、ニュースだ!と思って、原文をあたってみると、 Hitherto in history, many wars have been waged. In this context, women’s human rights were violated. My hope is that the 21st century will be the first century where there will be no violation of human rights, and to that end, Japan would like to do our outmost.「今日に至る歴史において、多くの戦争が起こされました。こうした状況のなかで、女性の人権が侵害されました。私は21世紀が人権侵害のない最初の世紀になるよう願っている、そのために、日本としても最大限のことをしたい。」と、いつもと同じコメントをしているだけでした。「慰安婦」制度を明確に指摘して「女性たちの人権が侵害された」とは、日本政府は、まだ一度も認めたことがありません。ちなみに、今年の2月18日、参議院本会議での安倍首相の答弁を見てみましょう。

歴史認識及び慰安婦問題についてのお尋ねがありました。
安倍政権としては、戦後五十年の村山談話、戦後六十年の小泉談話を含め、歴史認識に関する歴代内閣の立場を全体として引き継いでおり、今後も引き継いでいく考えであります。慰安婦問題については、これまで累次の機会に申し上げてきたとおり、筆舌に尽くし難いつらい思いをされた方々のことを思い、非常に心が痛みます。この点についての思いは、私も歴代総理と変わりません。同時に、私としては、この問題を政治問題、外交問題化させるべきではないと考えております。これまでの歴史の中では多くの戦争があり、その中で女性の人権が侵害されてきました。二十一世紀こそ人権侵害のない世紀にすることが大切であり、日本としても全力を尽くしていく考えであります。



ね、ほとんどオウム状態でしょう?(オウムに失礼!)。自分の意見を言うとすぐに地雷を踏むので、絶対に「既定路線」からははずれないのが、安倍です。 

というわけで、やっぱり産経は誤報が多い。
あちゃ。誤報は産経だけかと思ったら、朝日も同じ。→こちら

新聞報道にこだわり始めると、(2)で紹介した毎日新聞の記事も、改めて読むとよくわからない。

 「人身売買」との日本語は、民間業者による売買の意味合いが強い。これに対し英語の「トラフィッキング」は強制連行も含む語感がある」


比較をするのであれば、「日本語では強制連行を含まないが、トラフィッキングは含む」とか、「日本語では「民間業者が主体の意味あいが強いが、英語では行政をも含む」とか、そんな風になるべきじゃないだろうか? いずれにせよ、ここでも「強制連行」の具体的なイメージは宙に浮いたままです。

というわけで、結論。
ワシントン・ポストでの「人身売買」発言は、何も進展がないばかりか、これだけ被害国を怒らせたのだから、現時点では「失敗した」、あるいは状況を後退させたとしか言いようがない。米国政府の評価ははっきり言って、被害者の被害回復には関係がない。シャーマン米国務次官の発言をきっかけに、韓国で「アメリカは日本寄り」のイメージが増幅しているなかで、火に油を注いだとも言えるのではないか。さらに、今年は米国政府の圧力のもとで締結した日韓協定から50年の節目。またもやアメリカ様の圧力で朴正煕の娘が折れていったとしたら・・・このようなデジャブは耐えられないだろう。

今回の一連の騒ぎは、Team ABEが、米議会演説を前に一歩前進と見えるような方策を目論んだだけではなく、韓国の世論が大きく反発することも見込んで、「韓国は何を言っても反発する」という空気をつくるTeam ABEの策略だったのかもしれない。自民党副総裁の高村がアメリカ様に「蒸し返された疲れた」と発言をしたという報道もその裏付けだろう。河野談話を見直すと首相が発言したり、閣僚が暴言を吐いたり、蒸し返しているのはどっちなのかと、私が被害者だったら確実に思うに違いない。

結論として、安倍首相が「これは国家ぐるみの人身売買システムだった」等の発言をしない限り、アウトである。
米国議会の議員のみなさまにおいては、人身売買システムを構築したのは誰だったのかを、安倍首相から引き出す場をつくってほしい。ほら、英語では、主語が必要でしょ? 





安倍首相と人身売買(2) なぜ「人身取引」を使わない?
ワシントン・ポストの記事が出されて以降、メディアの関心事のひとつが「英語ではhuman traffickingと訳されているが、日本語では何だったのか」だった。そんなん「人身売買」か「人身取引」にきまってるやないけ・・・と思っていたために、用語を聞くことで何を明らかにしたいのか、よくわからなかった。

用語についていえば、今も続く性的搾取の目的で日本に連れてこられる多数の少女たちの被害は、長く「人身売買」と呼ばれていた。それが、日本政府が2000年に採択された「国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する人(特に女性及び児童)の取引を防止し、抑止し及び処罰するための議定書(略称 国際組織犯罪防止条約人身取引議定書)」の国会承認を得るにあたって、trafficking in personsの政府訳として採用したのが「人身取引」だったために、今は一般的に「人身取引」を使うことが増えている。しかしその問題点については、人身売買問題に取り組んできた「人身売買禁止ネットワーク」が解説している。用語解説はこちら。 
どちらかというと、運動的には「人身売買」を使い続け、政府的な公式用語としては「人身取引」を使っているイメージがあったので、どうして後ろに官僚を配する安倍首相が「人身売買」という用語を使うのか、よくわからなかった。

「人身売買」を使った意図について、産経と毎日がコメントしている。
毎日新聞(2015.3.30) 

 「人身売買」との日本語は、民間業者による売買の意味合いが強い。これに対し英語の「トラフィッキング」は強制連行も含む語感がある。旧日本軍などによる強制連行という機微に触れる問題で、国内向けには強制連行を認めず、米国向けにはあいまいにする狙いがあったとみられる。



産経(2015.3.29)

「安倍晋三首相が米紙のインタビューで慰安婦について、人間を物品と同じように売買することを意味する『人身売買』という表現を使った理由について、政府高官は28日、『特別な意味はない』と語った。ただ、『人身売買には日本語の意味として強制連行は含まれない』とも指摘しており、旧日本軍や官憲による強制連行説とは、一線を画す意図もあったとみられる」

産経(2015.3.29 紙面より):なんと!産経はすべてネットで内容をチェックできるからコピペで済むとおもったら、この記事は前半はネットにもあったが上記の部分は削除されている。



「安倍政権広報紙」の産経は、いつでも新しい情報を入れているから侮れない。誰かわからないが政府高官による『人身売買には日本語の意味として強制連行は含まれない』というコメントの「日本語の意味として」と入れることで英語との違いを際立たせたいのか? 上記の毎日新聞にある「民間業者による売買の意味合いが強い。これに対し英語の「トラフィッキング」は強制連行も含む語感がある」ともつながっている。
つまり、日本語の「人身売買」には「いわゆる強制連行」は含まれないが、英語のtraffickingには含まれるということを言いたいように思われる。

なぜ安倍首相は、human traffickingにあたる政府用語の「人身取引」を使わなかったのか? それは、人身取引の用語の定義がはっきりしているが、「人身売買」の定義ははっきりしていないと、逃げられるからではないかとも思われる。「侵略」の国際法の定義を持ち出す安倍首相らしいやり方ではないか。

議定書における人身取引の定義は:

第三条 用語
この議定書の適用上、
(a)「人身取引」とは、搾取の目的で、暴力その他の形態の強制力による脅迫若しくはその行使、誘拐、詐欺、欺もう、権力の濫用若しくはぜい弱な立場に乗ずること又は他の者を支配下に置く者の同意を得る目的で行われる金銭若しくは利益の授受の手段を用いて、人を獲得し、輸送し、引き渡し、蔵匿し、又は収受することをいう。搾取には、少なくとも、他の者を売春させて搾取することその他の形態の性的搾取、強制的な労働若しくは役務の提供、奴隷化若しくはこれに類する行為、隷属又は臓器の摘出を含める。
(b)(a)に規定する手段が用いられた場合には、人身取引の被害者が(a)に規定する搾取について同意しているか否かを問わない。
(c)搾取の目的で児童を獲得し、輸送し、引き渡し、蔵匿し、または収受することは、(a)に規定するいずれの手段が用いられない場合であっても、人身取引とみなされる。
(d)「児童」とは、十八歳未満のすべての者をいう。



この定義にてらせば日本軍は、まさに「官製人身売買システム」を持っていたことは明らかで、それを米国では認めた形をとり、日本では「強制連行は含まれない」というわけのわからない説明をしようとしているとしたら、いつまでたっても、かみあわない。何度も主張しているが、日本政府はいいかげん、「軍や官憲によるいわゆる強制連行」の定義を明らかにして、どのような行為を指すのかはっきりさせ、「意思に反した」様々な形の連れて行き方の、暴力的なもののひとつであることを明らかにして、それだけ否定しても意味がないことをはっきりさせたらどうだろうか。重箱の隅みたいなものを否定しても日本政府・軍の責任はなくならない。アジア太平洋地域にこれだけのシステムを軍や政府がつくっていたことこそが、「20世紀最大の人身取引」と米国議会決議が指摘したことだろう。








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