※10月13日(土)に開催するシンポジウム「アルゼンチン・正義を求める闘いとその記録 性暴力を人道に対する犯罪として裁く!」に向けて、wam会員MLに投稿したアルゼンチン訪問報告を転載します。
■ アルゼンチン報告(2)
(2018年9月24日)
第2回目のテーマは「人権侵害の記録の保管と公開」にします。
●第三国で記録を保管する●●●
今回、改めて学んだのは、人権侵害の記録は「第三国」でも保管すべきだということでした。
民政移管後すぐの1985年に行われた裁判(*Juicio a las Juntas)の資料は、*
*ノルウェー政府が保管しているそうです。また、そういった政府間の連携だけではなく、*
*メモリア・アビエルタ(「開かれた記憶」の意。民間による人権侵害の記録のアーカイブズ)*
*が収集している証言映像なども、**フランスの政府系アーカイブズが**コピーを**保管しているといいます。*
*軍政期にフランスへ移住した人も多く、フランス側に積極的な人がいたと言っていました。*
*基本的に軍側がなんの資料も提供しない中では、証言記録は極めて貴重な証拠です。*
*今回、訪問した**「オリンポ」と呼ばれた警察の**元秘密拘禁施設は、現在記憶の場になっていますが、*
*そのオリンポで教育活動をしている方が、「私たちの持っている証言も、少なくとも、*
*コピーを国外に置きたい」と話していたので、「現実的な危険を感じることはあるのか?」*
*と聞いたところ、「裁判が進行中なので、軍側の弁護に使うためといって持って行かれたらおしまいだ」と言っていました。*
*日本だと人々の関心がなくなることによって記録の廃棄されてしまう危機を感じることが多いですが、*
*権力側に持って行かれてしまう可能性があるような場合には、事前にその手当をすべきだということです。*
アルゼンチンの場合は、もちろん「国内」での人権侵害の記録であるとはいえ、
「慰安婦」問題の資料の場合、日本の環境は安全とは言えないでしょう。
この課題で国外にも保管といったら、やっぱり韓国でしょうか・・・。いろいろと思いめぐらしました。
●市民による記録化●●●
前回のメールで、アルゼンチンに連絡した理由のひとつが「ユネスコ記憶遺産」だったことをお伝えしましたが、今回、その時にメモリア・アビエルタの担当者として申請書類を書いた方にお話を聞くことができました。
そもそも、ユネスコ記憶遺産に登録することになったきっかけが面白いというか、「アルゼンチン的」というか。
松野さんの解説にもありましたが、軍政から民政に移管した後のアルフォンシン政権の際に、真実委員会が設置され、『二度とふたたび(Nunca Mas)』という有名な報告書が出されましたが、この調査に多大なる情報提供をしたのが人権団体でした。その後、過去の人権侵害の真実、正義、記憶に取り組んだ前キルチネル政権の時に「国立記憶アーカイブズ」が設置され、委員会資料が保管されることになりました。そしてこの「国立記憶アーカイブズ」が、自分たちの成果としてこれらの記録をユネスコ記憶遺産に登録しようとしたため、「誰のおかげで記録が残せたと思っているんだ!」と異を唱えたのが人権団体だったそうです。
ユネスコ記憶遺産登録は、自分たちも共同登録団体とするよう働きかけた結果だといいます。
過去の人権侵害に関する「国立記憶アーカイブズ」 があるというと、すごいような気がしますが、人権団体の評価は低いものでした。「自分たちこそが聞き取りの記録を残してきた」という自負があり、実際にそれらの記録をアーカイブズ化して公開する仕事は、民間のほうが進んでいるようです。
この民間団体のメモリア・アビエルタは、1985年の裁判の際に検事を務めたルイス・モレノ・オカンポが所蔵していた資料も寄贈を受けたそうです(ルイス・モレノ・オカンポといえば、国際刑事裁判所の初代検事。
国家元首への逮捕状を出したことで知られている)。軍側がまったく資料を出さない中で、内務省から内密に提供された資料など、当時の貴重な資料が含まれていました。
これらを「国立記憶アーカイブズ」ではなく、民間団体であるメモリア・アビエルタが受領しているところが面白い。
それだけ、信頼があるということでしょう。
スカイプでの打ち合わせで、市民こそが記録の管理者であることの意味を強く主張していましたが、国家任せにしない、 これまでの実践、実績からの発言だったのだと思いました。
民間と国家で同じ仕事をしているのではないか、という議論も一時あったそうですが、過去を矮小化しようとするマクリ政権のもとでは、民間の役割が高まっているとも言っていました。
この「メモリア・アビエルタ」の代表を10月13日にはお招きしています。ご期待ください!
●どんなところ?●●●
「メモリア・アビエルタ」の写真を以下のFBにアップしました。
雰囲気がわかると思うので、ぜひのぞいてみてください。
https://www.facebook.com/wampeace/
この敷地は、ESMAと呼ばれる元海軍技術学校の跡地で、
国内の秘密拘禁所のなかでも最大規模のものでしたが、
現在は記憶の場としてさまざまな団体や施設が入っています。
渡辺美奈
■ アルゼンチン報告(2)
(2018年9月24日)
第2回目のテーマは「人権侵害の記録の保管と公開」にします。
●第三国で記録を保管する●●●
今回、改めて学んだのは、人権侵害の記録は「第三国」でも保管すべきだということでした。
民政移管後すぐの1985年に行われた裁判(*Juicio a las Juntas)の資料は、*
*ノルウェー政府が保管しているそうです。また、そういった政府間の連携だけではなく、*
*メモリア・アビエルタ(「開かれた記憶」の意。民間による人権侵害の記録のアーカイブズ)*
*が収集している証言映像なども、**フランスの政府系アーカイブズが**コピーを**保管しているといいます。*
*軍政期にフランスへ移住した人も多く、フランス側に積極的な人がいたと言っていました。*
*基本的に軍側がなんの資料も提供しない中では、証言記録は極めて貴重な証拠です。*
*今回、訪問した**「オリンポ」と呼ばれた警察の**元秘密拘禁施設は、現在記憶の場になっていますが、*
*そのオリンポで教育活動をしている方が、「私たちの持っている証言も、少なくとも、*
*コピーを国外に置きたい」と話していたので、「現実的な危険を感じることはあるのか?」*
*と聞いたところ、「裁判が進行中なので、軍側の弁護に使うためといって持って行かれたらおしまいだ」と言っていました。*
*日本だと人々の関心がなくなることによって記録の廃棄されてしまう危機を感じることが多いですが、*
*権力側に持って行かれてしまう可能性があるような場合には、事前にその手当をすべきだということです。*
アルゼンチンの場合は、もちろん「国内」での人権侵害の記録であるとはいえ、
「慰安婦」問題の資料の場合、日本の環境は安全とは言えないでしょう。
この課題で国外にも保管といったら、やっぱり韓国でしょうか・・・。いろいろと思いめぐらしました。
●市民による記録化●●●
前回のメールで、アルゼンチンに連絡した理由のひとつが「ユネスコ記憶遺産」だったことをお伝えしましたが、今回、その時にメモリア・アビエルタの担当者として申請書類を書いた方にお話を聞くことができました。
そもそも、ユネスコ記憶遺産に登録することになったきっかけが面白いというか、「アルゼンチン的」というか。
松野さんの解説にもありましたが、軍政から民政に移管した後のアルフォンシン政権の際に、真実委員会が設置され、『二度とふたたび(Nunca Mas)』という有名な報告書が出されましたが、この調査に多大なる情報提供をしたのが人権団体でした。その後、過去の人権侵害の真実、正義、記憶に取り組んだ前キルチネル政権の時に「国立記憶アーカイブズ」が設置され、委員会資料が保管されることになりました。そしてこの「国立記憶アーカイブズ」が、自分たちの成果としてこれらの記録をユネスコ記憶遺産に登録しようとしたため、「誰のおかげで記録が残せたと思っているんだ!」と異を唱えたのが人権団体だったそうです。
ユネスコ記憶遺産登録は、自分たちも共同登録団体とするよう働きかけた結果だといいます。
過去の人権侵害に関する「国立記憶アーカイブズ」 があるというと、すごいような気がしますが、人権団体の評価は低いものでした。「自分たちこそが聞き取りの記録を残してきた」という自負があり、実際にそれらの記録をアーカイブズ化して公開する仕事は、民間のほうが進んでいるようです。
この民間団体のメモリア・アビエルタは、1985年の裁判の際に検事を務めたルイス・モレノ・オカンポが所蔵していた資料も寄贈を受けたそうです(ルイス・モレノ・オカンポといえば、国際刑事裁判所の初代検事。
国家元首への逮捕状を出したことで知られている)。軍側がまったく資料を出さない中で、内務省から内密に提供された資料など、当時の貴重な資料が含まれていました。
これらを「国立記憶アーカイブズ」ではなく、民間団体であるメモリア・アビエルタが受領しているところが面白い。
それだけ、信頼があるということでしょう。
スカイプでの打ち合わせで、市民こそが記録の管理者であることの意味を強く主張していましたが、国家任せにしない、 これまでの実践、実績からの発言だったのだと思いました。
民間と国家で同じ仕事をしているのではないか、という議論も一時あったそうですが、過去を矮小化しようとするマクリ政権のもとでは、民間の役割が高まっているとも言っていました。
この「メモリア・アビエルタ」の代表を10月13日にはお招きしています。ご期待ください!
●どんなところ?●●●
「メモリア・アビエルタ」の写真を以下のFBにアップしました。
雰囲気がわかると思うので、ぜひのぞいてみてください。
https://www.facebook.com/wampeace/

国内の秘密拘禁所のなかでも最大規模のものでしたが、
現在は記憶の場としてさまざまな団体や施設が入っています。
渡辺美奈
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