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「慰安婦」問題に焦点を当て、戦時性暴力の被害と加害の資料を集めた「女たちの戦争と平和資料館」(wam)のブログです。
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米議会での演説って栄誉なの?
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「館長のつぶやき」開始宣言―過去4年間のwamだより巻頭エッセイ公開!
ふと思い立って「館長のつぶやき」を始めてみることにしました。

wamの仲間たちから何度も促され、wamのブログにせっかくカテゴリーまで作ってもらいながら取りかかれず、2年半も経ってしまいました。文章を書くのは好きなのにツイッターやFacebookといったSNSが苦手で、何よりも日々、仕事のメールや原稿書きに追われていたからでした。ところが最近、そんなことを四の五の言っていられなくなって、「私もつぶやいてみようかしら」と思うようになりました。

wamのような「慰安婦」被害者の証言や資料を集めた資料館を運営し、日夜、「慰安婦」制度を編み出した日本軍の戦争に関わる仕事をしている身としては、このところの日本の政治や社会の変貌ぶりに唖然・呆然、絶望的な気持ちに陥ることがしばしばです。この国は性懲りもなく、再び戦争への道を転がり落ちていくのではないかと思うからです。特定秘密保護法の制定や集団的自衛権の行使容認にしても、「慰安婦」問題を封殺することに血道をあげる安倍首相、さらには沖縄辺野古へ基地移設のごり押しや教科書検定で政府見解をねじ込ませる文科省・・・などなど、歴史を歪曲・捏造しながら全体主義国家へ歩みを進めていく流れが滔々としてきて、日本の前途の危うさは極限に達しています。

これに対して政治権力の監視と批判をすべき立場にあるメディアは、本来の役割を忘れたように、政権へすり寄ったり後追いをするばかりです。これも戦前の1930年代にそっくりです。昨年の8月の「慰安婦」報道検証を機に燃え広がった朝日新聞バッシングには、「リベラル派メディアを一網打尽にするのだ」とも言える異様な雰囲気が満ちていました。

この余波で、wamには国内外からの取材や講演・原稿依頼が殺到しましたが、メディアによる「慰安婦」問題のタブー化や自主規制は一層強くなり、私たちのように「慰安婦」問題に取り組んできた者たちの声はなかなか取り上げられません。

そこで私は、この問題の現状やメッセージを伝えられる場があれば、どんな機会も無駄にするまいと思うに至りました。かと言って、苦手で慣れない「つぶやき」を日常的に発信するのは無理ですから、ぽつりぽつりと始めます。

実はこの「館長のつぶやき」に近いのは、年に3回発行している「wam だより」の巻頭エッセイだと思うのです。先日、まとめて読み直してみたところ、そうか、こんな風につぶやいていけばいいのかも…と、少し気が楽になりました。「つぶやき」と言ってもツイッターのように140字以内ではとても間に合いませんから、まあ、「おしゃべり」以上、「スピーチ」未満とでも言いましょうか。

今回はこの「つぶやき」開始宣言の記念に、「wam だより」の17号(2011年3月発行)から先月末に発行した29号までの巻頭エッセイを、ウェブサイトに掲載してみることにしました。この4年間は、2011年3月の東日本大震災と東電の原発事故という日本の根幹部分を揺さぶる大惨事の後、この国の政治やメディアの劣化が露わになった時期から始まり、2012年12月からの第2次安倍政権下での「戦争ができる国づくり」が着々と進められてきた歩みに沿っています。折々の“悲鳴”に近いつぶやきと、それでも言わざるをえない“決意表明”ばかりで明るい話題に乏しいエッセイですが、気になる話題があったら読んでみてください。

「wam だより」の巻頭エッセイが4ヵ月ごとの「つぶやき」だとしたら、ここではもう少し頻繁につぶやかせていただきます。乞うご期待!(なんて、大丈夫かな。。。)

↓↓wamだよりの巻頭エッセイのタイトル(文章に直接リンクしています)↓↓

29号(2015.3)  国会を包囲した 安倍政権への怒りのレッドカード
28号(2014.11) 常軌を逸した朝日新聞バッシング
27号(2014.7)  「集団的自衛権の行使容認」が連れてくる社会
26号(2014.3)  籾井会長、NHKは政府の広報機関ですか?
25号(2013.11) wamが日本平和学会・平和賞を受賞!
24号(2013.7)  参院選の惨憺たる結果にうなだれつつ、新たな決意!
23号(2013.3)  憲法があぶない!―ベアテ・シロタ・ゴードンさんの遺言
22号(2012.11) 日中韓の危機的状況の中で
21号(2012.7)  沖縄と東京の「慰安婦」問題をめぐる“温度差”
20号(2012.3)  「慰安婦」問題をめぐる日本のメディアの深い闇
19号(2011.11) “民衆蜂起の時代”の連帯活動
18号(2011.7)  原発に向き合う
17号(2011.3)  韓国・闘う女性アーティストとの出会い


安倍首相と人身売買(3)産経の誤報と結論
すみません、昨日、間違えて更新してしまったようですが、書きかけでしたので、以下訂正版です・・・。




もう一点、ワシントン・ポストの原文を確認して気が付いたのが、産経の誤報である。またもや。

2015年3月28日の産経では、紙面版で:

同紙電子版が伝えた詳報によると、首相は慰安婦問題によって「女性の人権が侵害された」と指摘し、「21世紀を人権侵害のない最初の世紀とすることを願っている」と述べた。
(電子版ではちょっと違う:同紙電子版が伝えた詳報によると、首相は慰安婦問題により「女性の人権が侵害された」と指摘「21世紀を人権侵害のない最初の世紀とすることを願っている」と述べた。)



「首相は慰安婦問題によって『女性の人権が侵害された』と指摘した」という部分、「問題」によって女性の人権が侵害ってどういうことだろう?と思ったし、もしも「慰安婦」制度が女性の人権侵害だと認めたなら、今まで発言していないので、ニュースだ!と思って、原文をあたってみると、 Hitherto in history, many wars have been waged. In this context, women’s human rights were violated. My hope is that the 21st century will be the first century where there will be no violation of human rights, and to that end, Japan would like to do our outmost.「今日に至る歴史において、多くの戦争が起こされました。こうした状況のなかで、女性の人権が侵害されました。私は21世紀が人権侵害のない最初の世紀になるよう願っている、そのために、日本としても最大限のことをしたい。」と、いつもと同じコメントをしているだけでした。「慰安婦」制度を明確に指摘して「女性たちの人権が侵害された」とは、日本政府は、まだ一度も認めたことがありません。ちなみに、今年の2月18日、参議院本会議での安倍首相の答弁を見てみましょう。

歴史認識及び慰安婦問題についてのお尋ねがありました。
安倍政権としては、戦後五十年の村山談話、戦後六十年の小泉談話を含め、歴史認識に関する歴代内閣の立場を全体として引き継いでおり、今後も引き継いでいく考えであります。慰安婦問題については、これまで累次の機会に申し上げてきたとおり、筆舌に尽くし難いつらい思いをされた方々のことを思い、非常に心が痛みます。この点についての思いは、私も歴代総理と変わりません。同時に、私としては、この問題を政治問題、外交問題化させるべきではないと考えております。これまでの歴史の中では多くの戦争があり、その中で女性の人権が侵害されてきました。二十一世紀こそ人権侵害のない世紀にすることが大切であり、日本としても全力を尽くしていく考えであります。



ね、ほとんどオウム状態でしょう?(オウムに失礼!)。自分の意見を言うとすぐに地雷を踏むので、絶対に「既定路線」からははずれないのが、安倍です。 

というわけで、やっぱり産経は誤報が多い。
あちゃ。誤報は産経だけかと思ったら、朝日も同じ。→こちら

新聞報道にこだわり始めると、(2)で紹介した毎日新聞の記事も、改めて読むとよくわからない。

 「人身売買」との日本語は、民間業者による売買の意味合いが強い。これに対し英語の「トラフィッキング」は強制連行も含む語感がある」


比較をするのであれば、「日本語では強制連行を含まないが、トラフィッキングは含む」とか、「日本語では「民間業者が主体の意味あいが強いが、英語では行政をも含む」とか、そんな風になるべきじゃないだろうか? いずれにせよ、ここでも「強制連行」の具体的なイメージは宙に浮いたままです。

というわけで、結論。
ワシントン・ポストでの「人身売買」発言は、何も進展がないばかりか、これだけ被害国を怒らせたのだから、現時点では「失敗した」、あるいは状況を後退させたとしか言いようがない。米国政府の評価ははっきり言って、被害者の被害回復には関係がない。シャーマン米国務次官の発言をきっかけに、韓国で「アメリカは日本寄り」のイメージが増幅しているなかで、火に油を注いだとも言えるのではないか。さらに、今年は米国政府の圧力のもとで締結した日韓協定から50年の節目。またもやアメリカ様の圧力で朴正煕の娘が折れていったとしたら・・・このようなデジャブは耐えられないだろう。

今回の一連の騒ぎは、Team ABEが、米議会演説を前に一歩前進と見えるような方策を目論んだだけではなく、韓国の世論が大きく反発することも見込んで、「韓国は何を言っても反発する」という空気をつくるTeam ABEの策略だったのかもしれない。自民党副総裁の高村がアメリカ様に「蒸し返された疲れた」と発言をしたという報道もその裏付けだろう。河野談話を見直すと首相が発言したり、閣僚が暴言を吐いたり、蒸し返しているのはどっちなのかと、私が被害者だったら確実に思うに違いない。

結論として、安倍首相が「これは国家ぐるみの人身売買システムだった」等の発言をしない限り、アウトである。
米国議会の議員のみなさまにおいては、人身売買システムを構築したのは誰だったのかを、安倍首相から引き出す場をつくってほしい。ほら、英語では、主語が必要でしょ? 





安倍首相と人身売買(2) なぜ「人身取引」を使わない?
ワシントン・ポストの記事が出されて以降、メディアの関心事のひとつが「英語ではhuman traffickingと訳されているが、日本語では何だったのか」だった。そんなん「人身売買」か「人身取引」にきまってるやないけ・・・と思っていたために、用語を聞くことで何を明らかにしたいのか、よくわからなかった。

用語についていえば、今も続く性的搾取の目的で日本に連れてこられる多数の少女たちの被害は、長く「人身売買」と呼ばれていた。それが、日本政府が2000年に採択された「国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する人(特に女性及び児童)の取引を防止し、抑止し及び処罰するための議定書(略称 国際組織犯罪防止条約人身取引議定書)」の国会承認を得るにあたって、trafficking in personsの政府訳として採用したのが「人身取引」だったために、今は一般的に「人身取引」を使うことが増えている。しかしその問題点については、人身売買問題に取り組んできた「人身売買禁止ネットワーク」が解説している。用語解説はこちら。 
どちらかというと、運動的には「人身売買」を使い続け、政府的な公式用語としては「人身取引」を使っているイメージがあったので、どうして後ろに官僚を配する安倍首相が「人身売買」という用語を使うのか、よくわからなかった。

「人身売買」を使った意図について、産経と毎日がコメントしている。
毎日新聞(2015.3.30) 

 「人身売買」との日本語は、民間業者による売買の意味合いが強い。これに対し英語の「トラフィッキング」は強制連行も含む語感がある。旧日本軍などによる強制連行という機微に触れる問題で、国内向けには強制連行を認めず、米国向けにはあいまいにする狙いがあったとみられる。



産経(2015.3.29)

「安倍晋三首相が米紙のインタビューで慰安婦について、人間を物品と同じように売買することを意味する『人身売買』という表現を使った理由について、政府高官は28日、『特別な意味はない』と語った。ただ、『人身売買には日本語の意味として強制連行は含まれない』とも指摘しており、旧日本軍や官憲による強制連行説とは、一線を画す意図もあったとみられる」

産経(2015.3.29 紙面より):なんと!産経はすべてネットで内容をチェックできるからコピペで済むとおもったら、この記事は前半はネットにもあったが上記の部分は削除されている。



「安倍政権広報紙」の産経は、いつでも新しい情報を入れているから侮れない。誰かわからないが政府高官による『人身売買には日本語の意味として強制連行は含まれない』というコメントの「日本語の意味として」と入れることで英語との違いを際立たせたいのか? 上記の毎日新聞にある「民間業者による売買の意味合いが強い。これに対し英語の「トラフィッキング」は強制連行も含む語感がある」ともつながっている。
つまり、日本語の「人身売買」には「いわゆる強制連行」は含まれないが、英語のtraffickingには含まれるということを言いたいように思われる。

なぜ安倍首相は、human traffickingにあたる政府用語の「人身取引」を使わなかったのか? それは、人身取引の用語の定義がはっきりしているが、「人身売買」の定義ははっきりしていないと、逃げられるからではないかとも思われる。「侵略」の国際法の定義を持ち出す安倍首相らしいやり方ではないか。

議定書における人身取引の定義は:

第三条 用語
この議定書の適用上、
(a)「人身取引」とは、搾取の目的で、暴力その他の形態の強制力による脅迫若しくはその行使、誘拐、詐欺、欺もう、権力の濫用若しくはぜい弱な立場に乗ずること又は他の者を支配下に置く者の同意を得る目的で行われる金銭若しくは利益の授受の手段を用いて、人を獲得し、輸送し、引き渡し、蔵匿し、又は収受することをいう。搾取には、少なくとも、他の者を売春させて搾取することその他の形態の性的搾取、強制的な労働若しくは役務の提供、奴隷化若しくはこれに類する行為、隷属又は臓器の摘出を含める。
(b)(a)に規定する手段が用いられた場合には、人身取引の被害者が(a)に規定する搾取について同意しているか否かを問わない。
(c)搾取の目的で児童を獲得し、輸送し、引き渡し、蔵匿し、または収受することは、(a)に規定するいずれの手段が用いられない場合であっても、人身取引とみなされる。
(d)「児童」とは、十八歳未満のすべての者をいう。



この定義にてらせば日本軍は、まさに「官製人身売買システム」を持っていたことは明らかで、それを米国では認めた形をとり、日本では「強制連行は含まれない」というわけのわからない説明をしようとしているとしたら、いつまでたっても、かみあわない。何度も主張しているが、日本政府はいいかげん、「軍や官憲によるいわゆる強制連行」の定義を明らかにして、どのような行為を指すのかはっきりさせ、「意思に反した」様々な形の連れて行き方の、暴力的なもののひとつであることを明らかにして、それだけ否定しても意味がないことをはっきりさせたらどうだろうか。重箱の隅みたいなものを否定しても日本政府・軍の責任はなくならない。アジア太平洋地域にこれだけのシステムを軍や政府がつくっていたことこそが、「20世紀最大の人身取引」と米国議会決議が指摘したことだろう。






安倍首相と人身売買(1) ワシントン・ポストを読んでみよう

●はじめに
2015年3月27日付の米紙『ワシントン・ポスト』に、安倍首相が「慰安婦」が人身売買の被害者だと発言したことについて、同紙では「『人身売買』との言葉を公に使ったのは初めて」との側近のコメントをわざわざ掲載していることからも、「一歩前進」イメージをつくるための戦略だったことは明らかだろう。しかも記者が「あなたは歴史修正主義者と呼ぶのは正確か?」なんてわざわざ質問しているわけで、米国議会での演説を前に、ワシントン・ポストもTeam ABEによって使われてしまったか、と思わずにはいられない。

今年3月半ばにワシントンDCに3日間滞在して、米国政府・議会関係者、シンクタンク、研究者と話をする機会があったが、「Team ABE」がいかに戦略的に動いているかを、「見る」ことはできなかったが聞くことになった。何百億だかの広報予算を増額しているんだから、億単位の金を米国でうごめく「日本通」(Japan handlers)にばらまけば、いくらでも、どうにでもなるのではないかと想像すると、私たちのような弱小な「民衆1人1人」に何ができるんだろうかと、頭がクラクラしてくる。

それでも、どこにでも誠実な人は居る。とりわけ、米国には、私のような一介のNGO職員の話でも聞くだけのオープンさがあって、それはおおむね誰と話していても感じたことだ。日本政府関係者が2人、公開イベントには来ていたというが、「慰安婦」問題で日本の責任を指摘するために来ていても、誰も話しかけない。そういえば、国連人権小委員会で、日本軍性奴隷制とイギリス軍によるケニアでの長期にわたる性暴力を繋げて発言したときも、英国代表部はすぐにコメントのコピーを取りに来たが、日本代表部は来ない。日本政府は自分たちに反すると思う市民社会のコメントは、これまでも、今も、ことごとく排除しているというか、相手にさえしないように見える。「慰安婦」問題を含むさまざまな戦後補償問題の解決の糸口さえみつからない一つの理由は、被害を受けた相手方やその支援者を排除したり高圧的な態度をとるなどして、対話の相手としてみなさず、意見交換をしていないこともあるだろう。

さて、「慰安婦」問題を巡るさまざまな事件が起こる中で、「正確に書く」ために時間をかけていると、時機を逸してしまうということがよくある。メディアもよくわからない「知識人」も、はたまた政治家も、間違いだと思われる情報をそのまま垂れ流しても誰からも咎められず、私たちのような「市民の書き手」が、ちょっと間違えただけでも信頼をなくすという状況が、少し不公平に思う今日この頃。「人身売買/取引」問題も、このままだと「安倍は一歩妥協したのに、韓国が反発」というイメージで固まってしまいそうなので、自分なりに整理をしてみようと思う。

●ワシントン・ポストを読んでみよう。
さて、まずは原文を見てみよう。正確に訳すには時間がかかるので、ところどころ簡単に大意を訳している。ワシントン・ポスト(2015年3月26日電子版)のリンクはこちら

まず、記者のDavid Ignatiusは、安倍へのインタビューのリードとして、以下のようにコメントする。

Abe walks a tightrope in his efforts to invigorate Japan. He wants a more robust Japanese defense policy without kindling fears of renewed militarism. He seeks a less apologetic, inward-looking Japan but said he doesn’t want to undo apologies by previous prime ministers about procurement of “comfort women” or other sins of World War II.


(大意)安倍は日本を活性化させるために、綱渡りのような努力をしている。彼は新たな軍事主義の恐怖をあおることなく日本の防衛政策をより強固にしたい。お詫びがちで内向きではない日本を目指しながらも、「慰安婦」の調達やその他の第二次世界大戦の罪に関する過去の総理大臣の謝罪を取り消したくはないという。


ちなみに、この記者の語彙で気になるのは、procurement。調達とか入手とかっていう意味の言葉を使っている。日本軍に渡された後の慰安所での被害ではなく、「連行部分」に焦点をあてているように見えなくもない。もう一つが、「sins of WW2」。crimeという犯罪ではなく、宗教的にも倫理的にも感じられるsin!? なぜ、このような言葉を選んだのかちょっと気になります。それに対する安倍首相の答えは以下。

“On the question of comfort women,” he said, “when my thought goes to these people, who have been victimized by human trafficking and gone through immeasurable pain and suffering beyond description, my heart aches.” An aide said this was the first time he had publicly referred to “trafficking” in connection with the women.


(大意)「慰安婦問題については、人身売買/人身取引の被害を受け、筆舌に尽くしがたい痛みと苦しみを経験された方たちのことを思うと、心が痛む」と彼は言った。側近は、これらの女性に関連して「売買/取引」との言葉を公に使ったのは初めてだと言った。


この部分がいま、さかんに引用されている発言部分です。この記事は、David Ignatiusによる安倍首相独占インタビューの抜粋なので、安倍が本当に何を言ったのか、いや本当かどうかはわからないけど、少なくともQ&Aの形で掲載されているワシントン・ポストの電子版インタビューの詳報をみてみましょう。インタビュー詳報・電子版のリンクはこちら

ここでもDavid Ignatiusがもったいぶった質問をする。

Mr. Prime Minister, let me ask you a question about history: Every country thinks about its history; every country wants to feel comfortable with its history. You sometimes are called, by critics and friends alike, as someone who’s a “revisionist” ー who wants to say that some of the things that Japan has been accused of doing in its past, as dark as it was, some of those things aren’t true. So I want to ask you: Is it accurate to say that you are a revisionistーthat you would like to revise the picture of Japan so that it is, in your view, more accurate?


(大意)総理大臣、歴史について質問させてください。どこの国も自国の歴史を考えます。どこの国も自国の歴史について心地よく思いたい。あなたはしばしば、批評家や友人からも「歴史修正主義者」だと呼ばれています(中略)。お伺いしたいのは、日本のイメージを修正して、あなたの見解によればですが、より正確なものにしたいという「歴史修正主義者」だと呼ぶのは正確ですか?



A: My opinion is that politicians should be humble in the face of history. And whenever history is a matter of debate, it should be left in the hands of historians and experts. First of all, I would like to state very clearly that the Abe cabinet upholds the position on the recognition of history of the previous administrations, in its entirety, including the Murayama Statement [apologizing in 1995 for the damage and suffering caused by Japan to its Asian neighbors] and the Koizumi Statement [in 2005, stating that Japan must never again take the path to war]. I have made this position very clearly, on many occasions, and we still uphold this position. Also we have made it very clear that the Abe cabinet is not reviewing the Kono Statement [in 1993, in which the Government of Japan extended its sincere apologies and remorse to all those who suffered as comfort women].


(すみません、口ばっかりで気持ち悪いので、元気なときに訳します。)



On the question of comfort women, when my thought goes to these people, who have been victimized by human trafficking and gone through immeasurable pain and suffering beyond description, my heart aches. And on this point, my thought has not changed at all from previous prime ministers. Hitherto in history, many wars have been waged. In this context, women’s human rights were violated. My hope is that the 21st century will be the first century where there will be no violation of human rights, and to that end, Japan would like to do our outmost.


(大意)慰安婦問題については、人身売買/人身取引の被害を受け、筆舌に尽くしがたい痛みと苦しみを経験された方たちのことを思うと、心が痛む。この点において、私の考えはすべての前総理大臣とまったく変わっていないわけです。今日に至る歴史において、多くの戦争が起こされました。こうした状況のなかで、女性の人権が侵害されました。私は21世紀が人権侵害のない最初の世紀になるよう願っている、そのために、日本としても最大限のことをしたい。



「人身売買/取引」については、あとでまとめて検討したいが、訳語で言うと、日本の新聞はなぜ「victim」をすべて「犠牲者」と訳すんだろう。加害の主体があるこのような犯罪行為であり、かつ被害者たちは、数は少なくとも生きてるんですけど、ってつっこみを入れたくなる。
人身売買以外の発言内容はいつもと同じなので、同じことを指摘すると、どんなに「筆舌に尽くしがたい痛みと苦しみを経験された方たち」と言っても、被害をを与えた主語なく、「心が痛む」と言っているところでアウトである。加害国の首相としては心が痛むだけでなく、その事実を受け止めて、謝罪が求められている。その意味で、安倍と「以前の総理大臣」はまったく違う。安倍より前の首相はちゃんと「お詫びapology」という言葉を発していた。安倍は「feel pain」とか「my heart aches」とか、誰でも言える言葉しか使わない。自分の責任を認めたくないからだ。他国による犯罪行為の被害者に対して、私たちはfeel painといってもapologyは言わない。安倍は、責任を認めていないという意味で、「以前の総理大臣」とは、まったく違うんです。

(続く)


wamだより(vol.29)発行しました!
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「wamだより」VOL.29(2015.3)目次

国会を包囲した 安倍政権への怒りのレッドカード
危機に立つ 「慰安婦」問題とメディア
「徹底検証!読売『慰安婦』報道」展(上)
報告:wamシンポジウム・セミナー
 ・緊急シンポジウム 証言をどう聞くのか~証言が証拠になるとき
 ・wam de cafe特別編 ビデオを観ながらみんなでおしゃべり!
報告:「北京+20」in NY
 ・NYを舞台に「慰安婦」問題バトル!
第10回やより賞・やよりジャーナリスト賞贈呈式―やより賞の10年を振り返って
wamパネル巡回
連載 ベルリンからの風 Vol.5
 ・戦後70年―証言者が絶えた後を見据えるドイツ
連載 扉を開く(5)
 ・原告たちに寄り添って
連載 被害女性たちの今(26)韓国
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いくつかの記事が読めるようになっています(随時追加していきます)。ぜひご覧ください。





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