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「慰安婦」問題に焦点を当て、戦時性暴力の被害と加害の資料を集めた「女たちの戦争と平和資料館」(wam)のブログです。
ユネスコ記憶遺産と「慰安婦」:「対話」が必要なのか?
ユネスコ「世界の記憶」の結果発表にあたっては、今日の14時からソウルで記者会見が開かれ、そこで、基本的な論点、暫定的な方針が発表される。「対話」をせよといわれて、断るという判断は難しいかもしれないが、そもそも「対話すべき相手なのか」という点は、韓国や中国からは言いづらくても、私たち日本に住む者にとっては、大きな論点となるのではないかー。以下は日本に住むからこそ問いたい点と、今後の決意のようなもの。2017年10月31日記

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ユネスコのウェブサイトに、「国際諮問委員会はユネスコ世界の記憶に78の新たな登録を勧告した」と題した記事が掲載され、ユネスコ事務局長イリナ・ボコバ氏がこの勧告を承認したことが報告されています。そして、日本軍「慰安婦」に関わる文書について「対話」を促すよう、国際諮問委員会が事務局長に勧告したことも書かれています。私たちはこの記事を見て驚きました。これまでユネスコ「世界の記憶」に8カ国の市民団体による「慰安婦」関連記録が登録されることに強く反対し、分担金支払いの停止という常軌を逸した強い措置をとってきたのは、日本政府でした。しかしながら、この文書によると、対話の相手は “Documentation on ‘Comfort Women’ and Japanese Army discipline” (仮訳:「慰安婦」と日本陸軍の規律に関する記録)と題した文書の登録申請者とのことでした。
参考:https://en.unesco.org/news/international-advisory-committee-recommends-78-new-nominations-unesco-memory-world

私たちは、この登録申請者たちの申請文書は入手しておらず、その内容も正確には知りません。しかし、インターネット上でのその登録申請者が発表した声明によれば、日本軍「慰安婦」制度の事実を否定する、歴史修正主義者であることは明らかです。この人々は、「戦時中の慰安婦は商業売春婦であり、日本は謝罪も賠償も必要がない」と主張しています。安倍首相を含めた現政権が、これらの人々と同じ主張なのはこれまでの発言からわかっていますが、第2次世界大戦を経て設立され、ユネスコという正義、法の支配、人権及び基本的自由に対する普遍的な尊重をかかげて、平和を築くことを活動理念としてきた国際機関で、「兵糧攻め」ともいえる日本政府の圧力が効果をあげ、このような歴史修正主義者の言い分を「主張の1つ」「対話の相手」として扱ったことに、あらためて憤りと抗議の意を表します。「忘却の文化」に対しては、「対話」が必要なのではなく、「忘却の文化」を退け、「記憶の文化」を築くことこそが求められているのです。

日本政府は、8か国による「慰安婦」関連文書の登録を妨害するために、分担金支払いの停止・延期のみならず、国際諮問委員会に対して前例のないロビー活動を行ってきたと聞いています。そこには私たちの税金が投入されています。これらの活動した「記録」は外務省で保管しているのでしょうか、それとも内閣官房でしょうか。機密費として公開されず、文書、あるいは税金をいくら投入したかの記録も、森友・加計問題のように、都合の悪いものとして廃棄されるのでしょうか。この機会に、政府の政策決定の経緯を追えない日本の公文書管理の現状に対して、メディアや研究者のみなさまにも、問題提起をしていただきたいと切に願います。

日本政府が分担金を支払わなければ、ユネスコ職員の給与が11月からストップすることになる、そのような状況までユネスコを追い込んだ日本政府の行動を、日本の有権者として改めて恥ずかしく思います。思い通りにいかなければお金でコントロールしようとする日本政府姿勢は、ユネスコの歴史にも永遠に刻まれることでしょう。

日本の人々は「水に流す」という言葉をよく使います。しかし、水に流せないような人権侵害を受けた人々は、日本でも、覚えています。どのように過去を切り捨てようとしても、そして「未来志向」という名で前に進もうとしても、歴史は影のようについてきます。影を消すことはできません。そして、そのような影、過去からこそ、私たちは二度と同じ過ちをおかさないための教訓を得られるのです。

私たちは、このユネスコ「世界の記憶」の登録申請の経緯も歴史の一部として次の世代に伝えていくため、日本軍「慰安婦」アーカイブズ事業を通じて、記録管理を着実に進めていきます。

こちらもどうぞご覧ください⇒http://wam-peace.org/20171027/

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日韓「合意」は、国際社会からぜんぜん高く評価されていない!
5月11日、韓国の文在寅大統領と日本の安倍首相が電話協議を行ったというニュースが流れているが、この「電話協議」の報道内容も受け止めも、日韓のメディアでずいぶん違うらしい。日本のメディアに限っていえば、とりわけ気になるのが、「国際社会からも高く評価された日韓合意」と安倍が語ったのを、そのまま垂れ流していることだ。

日韓「合意」は、国際社会からぜんぜん「高く評価」されていない。

「国際社会」とは? 誰が「国際社会」を代表するのか? という疑問は当然湧くだろう。
日韓「合意」を待ってましたとばかり「歓迎」したのは、オバマ政権下のケリー国務長官だった。
米国の安保政策のために影で操っているのだから、それは当然だろう。
それ以外には、潘基文前国連事務総長が歓迎したが、大きな批判を受けて「人権基準にのっとるように」と主張を変えた。

批判したのは、フサイン国連人権高等弁務官。人権分野の国連ボスである。そして、真実・正義・被害回復および再発防止に関する特別報告者、拷問及び他の残虐、非人道的又は品位を傷つける取り扱い又は刑罰に関する特別報告者、法律および慣習における女性差別問題ワーキングループを代表して、3人の国連人権分野のエキスパートが批判を国連のプレスに出しているし、もちろん女性差別撤廃委員会も批判した。

さらに今日、国連の拷問禁止委員会が日韓「合意」の見直しを求めたというニュースが流れた。
産経新聞では「・・・合意の見直しを勧告する報告書を発表した。在ジュネーブ日本政府代表部も確認した」とあって、何か「特別な報告書」でも出したのかと思ったが、なんのことはない、韓国の拷問禁止条約の履行状況を拷問禁止委員会が5月2-3日に審査し、その結果として、最終所見(勧告)を5月11日に発表したということだった。韓国政府は、拷問禁止条約を完全に履行するためにも、これらの勧告に真摯に応える義務がある。

それにしても、なんというグッドタイミング・・・。「国際社会はぜんぜん高く評価していない」ことが、あらためて示された形だ。
韓国政府は、日韓「合意」の見直しを求めたって、反故にしたって、「国際社会」から非難を浴びることはないはずだ。だって国連の人権のエキスパートが、すでにこのままではダメだ、日韓「合意」では日本軍の性奴隷にされた女性たちの被害回復はなされないって、こんなに言っているんだから。

日本政府も、韓国政府と同様、これまでの国連勧告に真摯に応える義務がある。「法的拘束力はない」とはきすてる日本政府の態度は、人権理事国にあるまじき・・・というか、日本が人権後進国であることを世界に示しているようなものだ。「アメリカ様」は「国際社会」ではない。

すべての被害者/サバイバーが受け入れられるように、日本政府みずからが韓国政府と再協議を提案することこそが求められているし、すべての被害国と協議を始めることが必要である。海南島の陳亜扁さんも、5月11日に亡くなった。アジア太平洋各地で、すでに80代後半から90代になった日本軍性奴隷制の被害を受けた女性たちが、日本が歴史に向き合うことを求めている。

全文は計13ページ。12ページ目の一部に該当箇所がある。
以下は、日本軍性奴隷制に関する部分のとりあえずの訳出。
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Redress for victims of torture and ill-treatment
拷問および虐待の被害者の救済

47. The Committee is concerned:
(a) While welcoming the Agreement reached at the Republic of Korea-Japan Foreign Ministers’ Meeting on December 28, 2015, and taking note that there are still 38 surviving victims of sexual slavery during World War II, that the Agreement does not fully comply with the scope and content of its general comment No. 3 (2012) on the implementation of article 14 of the Convention, and fails to provide redress and reparation, including compensation and the means for as full rehabilitation as possible as well as the right to truth and assurances of non-repetition;
47. 委員会は以下のことを懸念する:
(a) 2015年12月28日の大韓民国と日本の外相による会合で到達した合意を歓迎するものの、第二次大戦中に性奴隷にされた存命の被害者がいまだ38名いること、この合意は当条約の14条の実施に関する一般勧告3号(2012年)の範囲と内容に完全に適合しておらず、また、賠償および可能な限りの完全なリハビリテーション、真実への権利と再発防止の確保のための措置を含む、救済と被害回復の提供ができていないことに留意し;

48. The State party should:
(d) Revise the Agreement of 28 December 2015 between the Republic of Korea and Japan in order to ensure that the surviving victims of sexual slavery during World War II are provided with redress, including the right to compensation and rehabilitation and the right to truth, reparation and assurances of non-repetitions, in keeping with article 14 of the Convention; and
48. 締約国は以下をすべきである:
(d)第二次大戦中に性奴隷にされた存命の被害者が、賠償とリハビリテーションの権利、および真実、被害回復、再発防止の確保への権利を含む救済を提供されるよう、大韓民国と日本の間の2015年12月28日の合意を見直すこと。

(*よりスムーズで適切な訳があったらお知らせください)


75年前の「大統領令9066号」
昨年11月、カリフォルニアで日本軍「慰安婦」の碑を設置するために活動している
「慰安婦」正義連帯 (CWJC)のみなさんからお話を聞く機会がありました。
そこには、日系ペルー人として米国の強制収容所に入れられた父親を持つグレース・シミズさんも参加し、正義を求める彼女の話はとても強い印象を残しました。そのグレースさんから、急ぎの賛同要請がきました。
https://www.change.org/p/inter-american-commission-on-human-rights-justice-now-for-the-shibayama-brothers

日系人強制収容所の問題といえば、レーガン政権だった1988年に過ちを認めて謝罪し、
一人2万ドルの賠償金を払って「解決した」問題として知られています。
しかし、そこから排除されたのが、日系ラテンアメリカ人でした。

グレースさんの父親は広島からペルーに移住しましたが、日本との戦争が始まってから米政府によってペルーから強制連行されました。日本軍捕虜となった米国人との人質交換のためだといいます。パナマで強制労働させられたのち、テキサスの収容所に入れられました。戦争が終わった後、多くの日系ペルー人が日本に強制送還されましたが、グレースさんの父親は米国に住む親戚を頼って「不法滞在者」として残り、1950年代にやっと永住許可を得ました。

日系人強制収容所の被害者の補償運動が始まり、1988年の日系アメリカ人補償法が実現しましたが、日系ペルー人はそこから排除されました。理由は「不法移民だったから」といいます。ペルーから強制連行したのは米国政府にもかかわらず・・・。

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日系ラテンアメリカ人の補償問題は、その後も続いてきました。数えると30年以上になります。
この間、米国司法からも、米国議会からも、ホワイトハウスからも拒まれてきましたが、アート・シバヤマさんら被害者は米州人権委員会に働きかけてきました。そして13年間待って、このたび、公聴会が開かれるかどうかの瀬戸際だといいます。
公聴会を3月に開かせるためにも、ぜひ協力してほしいというのがグレースさんからのメールでした。

日系ラテンアメリカ人の正義を求める署名を集めたい。
それも明日、2月19日までに!
なぜなら、75年前の明日「1942年2月19日」は「大統領令9066号」にルーズベルト大統領が署名・発行し、日系人の収容を可能にしたその日だから。

そして「2264筆集めたい」と書かれていました。
それは、強制連行された日系ラテンアメリカ人が2264人いたから。

関心を持たれたみなさん、署名は以下でできます。
https://www.change.org/p/inter-american-commission-on-human-rights-justice-now-for-the-shibayama-brothers

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現在、トランプ大統領のもとで国家による人権侵害を許す大統領令が打ち出されています。
それを司法によって止めようとしていること、そのこと自体は、過去の過ちを繰り返さないように
しているように見えます。
そのようななか、75年前の大統領令による人権侵害の被害者の話を聞く公聴会が
ワシントンDCで米州人権委員会によって開かれるということは、とても象徴的な気がします。

日系米国人の歴史については下記によくまとめられています。日本語も充実しています。
densho
この中の「インタビューで知る日系アメリカ人」の「過ちの是正」の映像では、
レーガンがきっちり過ちを認める姿が見られます。日本語字幕付き。

明日がそのような記憶すべき日であることも、今回初めて知りました。
どの国も、過去の人権侵害を過ちであったことを認めることは、未来をひらくことにつながります。
米州人権委員会という、人権を守るための最後の砦として地域的な枠組があるのはいいですね。
アジア人権委員会とかアジア人権裁判所、やっぱり必要だと思います。






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